I. §112(f)/§1126 の概要-明細書の参照を求める参照要求語(「ナンス(nonce)」語

 

           「クレームの当該用語が、構造の名称としての明確な意味を有していると、当業者により理解されているか」 Williamson v. Citrix Online, LLC, 792 F.3d 1339, 1349 (Fed. Cir. June 16, 2015) (裁判官全員による判決)

            「手段(ミーンズ)」という用語の欠缺は、当該用語がミーンズ・プラス・ファンクションとして解釈されるべきではないという、

「強い」推定を形成し、これは、当該制限が「構造として解釈されうるいかなる要素も、本質的に欠いている」ことを証明することによってのみ、克服されるという先例を変更した

            語義的解釈以上のものを何ら反映しない「ナンス(nonce)」語(一般的用語)は、「手段(手段)」という言葉を使っているのと等しい結果をもたらす

 

 

MPEP 2181条:3部構成テスト

A.          クレーム限定が、クレームされた機能を実現するための「手段 (ミーンズ)」もしくは「ステップ」という用語、または「手段(ミーンズ)」の代替として用いられる用語であって、一般的なプレースホルダー[用語代替箇所指示語](また、特定の構造的な意

味をもたないナンス(nonce)語、または非構造語(non-structural term )

とも呼ばれる)を使用している、

B.          「手段(ミーンズ)」もしくは「ステップ」という用語、または一般的なプレースホルダーが、機能的な文言によって修飾されているか、典型的には、但し、つねにではないが、繋ぎ言葉「のための(for)」によって繋がれているか(例:… のための手段(ミーン

ズ)(means for)、「…のために構成された(configure to)」もしくは

「それによって (so that)」のような、その他の繋ぎ言葉もしくは語句によって繋がれていない、および

C.          「手段(ミーンズ)」もしくは「ステップ」という用語、または一般的なプレースホルダーが、クレームされた機能を実現するため十分な、構造、材料、もしくは動作によって修飾されていない

  

USPTOにおける出願手続:

            審査官の§112(f)条の適用可能性の認定は、明細書で開示された構造(またはそれらの均等物)に、クレーム解釈を限定させる結果をもたらす可能性がある

            対応する構造の欠如は、不明確性を理由とする拒絶を支持させることになる可能性がある。In re Donaldson Co., 16 F.3d1189, 1195 (Fed. Cir. 1994) (裁判官全員出席判決)(「申請人が適切な開示を実行するのを怠った場合には、申請人は、[35 U.S.C. 112(b)条] により義務付けられるとおり、発明を詳細に指摘し、および明確にクレームするのを怠ったのと、実際は同じになる。)

  

II. §112(f)/§1126 の及ぼす影響

 

連邦地方裁判所:§112(f)条の下での解釈が、以下の結果をもたらすことがありうる:

            権利侵害を回避し、または侵害被疑構造が、開示された構造の均等物であるかに関する費用のかかる紛争を回避する、クレームの狭い解釈

            対応する構造の欠如に起因する不明確性による無効判断は、不明確性を理由とする拒絶を支持する

 

MPEP 2181条:審査官は、以下の点を確認しなければならない。

(1)        明細書に、当業者に対して、その用語が構造の外延を示す情報として十分な解説が提供されているか。

(2)          一般の、および主題特定的な辞書に、当該用語が、構造の外延を示すものとして認識を達成させる証拠が提供されているか。

(3)          先行技術により、当該用語が、クレームされた機能を実現する当業者が認識する構造を有しているとの証拠が提供されているか。

 

III. 何が、明細書の参照を求める参照要求語(「ナンス(nonce)」語とされるか?

           構造に関係しない一般的な補充必要語(non-structural generic placeholders)として認定されている用語例には、次のものが含まれる:

            「… のための機構」、「… のためのモジュール」、「… のための装置」、「… のためのユニット」、「… のための構成要素」、「… のための要素」、「… のための部材」、「… のための装置」、「… のための機械」、「… のためのシステム」、

「分散学習制御モジュール」

           十分に明確な構造を有すると認定された用語例には、次のものが含まれる:

            「回路」、「戻り止め機構」、「デジタル式検知器」、「往復運動する部材」、「 コネクタアセンブリ」、「穿孔」、「シール接続された継ぎ手」、「めがねレンズ掛吊部材」

 

           注:これらの例は、一般的に具体的事実関係に依存し、例えば、出願時点での明細書および用語の意味に基づき、同一の用語の解釈が異なることがありうる。