米国特許法散策(11)ベンソン、ディーア、フルック判決はソフトウェア関連の判決ではない

日本におけるアメリカ特許法の文献は、理解するのがむつかしい。なぜ、むつかしいのかの点を解きほぐす作業として、現在に至るまでアメリカの特許法判例で引用される「三点セット」を、直に読んできた(LinkedInにもアップロード済み)。

誤解修正の第1弾。

1. ベンソン判決 Gottschalk v. Benson, 409 U.S. 63 (1972)を読む
https://lnkd.in/gUBPiCew
2. フルック判決Parker v. Flook, 437 U.S. 584 (1978)を読む
https://lnkd.in/g84tqdKv
3. ディーア判決 Diamond v. Diehr, 450 U.S. 175 (1981) を読む
https://lnkd.in/geFxq8Wc

 

これら、3つの判決は、「コンピュータプログラムの特許適格性に関するリー ディングケースは,以下の 3 つが代表的に示される。」として(過去に)紹介されているが、判決文そのものを読んでみれば分かるとおり、「コンピュータプログラム」のことは、出てこない。

 

ディーア判決につては、「1981 年のディーア(Diehr)事件において、数学の公式又はアルゴリズムを使用し たソフトウェア関連発明がその他の装置他やプロセスと協働している場合は特許可能であるという判決を下した。この判決により、ソフトウェア関連発明に対する特許付与の道が開かれることとなった。」との紹介も(過去に)あったが、これも、ディーア判決の判決文を読めば、誤りであったことが分かると思う(そもそも米国連邦最高裁の判決文中に "software" という単語は出てこない)。

アメリカの特許適格性を巡る法改正の動向を理解するには、その前提として、上記の3判例を、正しく理解する必要がある。ベンソン、フルック、ディーア判決が、「ソフトウェア関連の判決」だという誤解を脱しない限り、特許の主題を巡る、米国の議論は、理解できないであろう。

日本固有の問題であるので、外国の方には理解しにくい論点かもしれない。