☤ At the Podium

■ 英文契約書関連で、とくにこのサイトに掲載しているようなテーマでのセミナー講師をやってみたいと思っています。この種のセミナー開催にご興味のある機関・企業をご紹介いただければ幸いです。

英米契約法に関する話題が中心となると思いますが、これまで集めてきた資料を基に、いろいろな発言・提言をしてみたいと思います。このコーナーの名称は、「At the Podium」、ヴァーチャルな演壇に登った気分で、「論説」をアップしていきます。「やわらかい」お話は、ブログ12.5へどうぞ。

 

✔日本の民法の編別にしたがった英米契約法の実用的コース実施の試み

      -中間報告(その一)-

(ページ数が多いので、pdfファイルをダウンロードしてご覧いただいた方が見やすいかもしれません。)

なお、静止画像(?)版は、ここでご覧いただけます。

日本の民法の編別にしたがった英米契約法の実用的コース実施の試み
日本の民法の編別にしたがった英米契約法の実用的コース実施の試み-中間報告-.pd
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✔GPLの法的性格: Eben Moglen の解説を中心にして

 

【要旨】 “The GPL Is a License, not a Contract.” というGPL をめぐる原理原則の宣言は新しいものではないが、わが国では、依然としてGPLは契約であると決めつけて議論を進める傾向にある。あるいは、より状況を悪化させているのは、「ライセンス」というカタカナ書きで議論を開始し、問題点の存在を曖昧にする陣営もある。筆者は、本稿で、「GPLはライセンスであって、契約ではない。」という原則に則り分析を進めることによって、GPLをめぐってこれまで提起されてきた問題の多くは、「擬似問題」、すなわち問題の立て方自体があやまっていたのであって、正しい解答など、そもそも望み得なかったことを論証してみたい。

 

 筆者がGPLに遭遇したのは、一方ではいわゆる「商用ライセンス契約書」の日本語版を、英語版の契約書に基づきながら作成したこと、他方では、いわゆる「オープンソースライセンス」の、やはり日本語版の作成に関わったときであるが、これはもう10年以上も前のことである。本サイトには、これら日本語化作業の例も掲載しているので、当時の実務家の到達点、あるいは理解の至らなかった点について、ご理解いただけるものと思う。当時は、参考文献もなく、例えば「Contributor」という定義用語の取扱いにも苦慮したことを覚えている(結局、「コントリビュータ」というカタカナ書きで妥協せざるを得なかった)。

 

 その後、筆者は、業務の関係で長らく不動産ファイナンスの世界に足を踏み入れることになり、GPL あるいはオープンソースライセンスについて触れる機会も少なくなっていった。ところで、この不動産ファイナンス業務の過程で、何度も license という用語に出くわした。英文の “Property” というタイトルの本を読まざるを得なくなって、license という英米法上の述語の意味が分かりだした。日本人に理解してもらうには「使用貸借」(民593条以下)と説明することが、もっとも便利であることも学んだ。

 

 さらに、その後で、英文契約書講座、ことに日本語の契約書を英語化するコースの講師を努めるかたわら、知的財産法の分野の仕事も再開することになった。GPLは、どうなったのであろうか。そう思い直して現在の学説・実務のキャッチアップに取りかかったが、状況は10年前とほとんど変わっていない。

 

 本稿は、これらの経緯を踏まえながら、わが国おける GPL の理解に、一石を投じようとするものである。「GPLはライセンスであって、契約ではない。」と素直に理解すれば、多くの問題は解消する。いわゆる「伝搬性」の問題についても、伝搬性、云々を論じるのはGPLを認めない陣営の議論であって、GPLを素直に読めば、「伝搬性」という伝搬しているかのごとき現象はあっても、「伝搬」などは存在しないとことが分かろう。さらに、GPLed されたソフトウェアを組み込むと「ソースコードを開示する義務を負う。」とかという議論も、ナンセンスなことが分かる。

 

GPLed されたソフトウェアのライセンシーの立場が、無償で物を使用させてもらっている「使用借主」と同様の地位にあるとしたら、これはリスクなのであろうか。目を覚まして考えてみれば、「無償で物の使用を許してもらっている」当事者の法的地位は、そのようなものではなかろうか。しかし、わが国では、地位の不安定性やリスクが喧伝される。

 

これら諸々の問題を、最小限度の前提命題から解決するよう努めてみたい。これが、本稿の目的とするところである。

 

論考は、数ページずつ執筆してはアップロードしていく計画であり、また、適宜、加筆訂正も行っていく。

 

 

GPLの法的性格: Eben Moglen の解説を中心にして

 

《目次》

 

第1 はじめに - Eben Moglen の解説とわが国におけるGPL理解の問題点

 

第2 “The GPL Is a License, not a Contract.” という命題について

 

2.1 License とは何か

 

2.1.1 License Lease

 

2.1.2 License の撤回可能性

 

2.2 GPL Licensor Licensee との関係

 

2.2.1 財貨帰属法と財貨運動法

 

2.2.2 Licensor Licensee との「準物権法的」な関係

 

2.2.3 Licensor Licensee との間に債権債務関係はない

 

2.3 いわゆる「伝搬性」という現象

 

第3 “The GPL Is a License, not a Contract.” という原則とソースコード公開原則

 

第4 GPL とその他のライセンス契約との交錯関係を分析する新たな枠組み

 

(2) 「GPLの有効性を承認したドイツの判決の翻訳」(近日掲載)

GPLの法的性格ー再論

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